竹博士の研究室
竹類の世界的な分布

竹類の世界的分布図(渡邊政俊、1987)

竹類の世界的な分布をみると、水平的には赤道を中心に薄黒色のベルト状の地域が分布域です。
竹類の繁殖の仕方

単軸型

連軸(仮軸)型

混合型
竹類の繁殖の仕方は、おおむね単軸型、連軸(仮軸)型および混合型に分けられ、それぞれの竹林の姿は異なります。すなわち、単軸型の繁殖では立竹は散生型(「バラ立ち型)、連軸型では叢生型(株立ち型)、混合型では塊のある散生型になります。

散生型(バラ立ち型)

叢生型(株立ち型)

散生型(塊のあるバラ立ち型)
タケノコの生長
 タケノコが発生することを発筍といいます。この発筍時期は種類によって違います。春の旬として八百屋の店頭にみずみずしくお目見えするのはモウソウチクのタケノコです。大型の種類では、次にハチク、そしてマダケの順に発筍します。
 真夏になると、熱帯性のホウライチクなどの株立ちの竹類が出始めます。そして、晩秋になるカンチクやシホウチクが発筍します。
 タケノコの伸長期間とは、タケノコが地上に発生してから葉を出して成竹するまでの期間をいいます。
 これまでに発表された暖温帯性竹類と熱帯性竹類は、20日間から120日間でした。これは生活型の違いによるのですが、おおむね暖温帯性竹類の伸長期間に比べ、熱帯性竹類は若干長い傾向がみられる。
 いずれにしても、タケノコが発生してから一人前の竹になるまでの期間は約100日程度、つまり3ヶ月ほどですから、このような伸長ぶりを示す植物は竹類の他にありません。
 1日(24時間)の伸長量の調査結果をみると、驚くべき記録があります。
 上田弘一郎博士(1963)が発表された記録を一覧表に書き直したところ、古くは1898年にモウソウチクで86cmが記録されています。
 以降、色々な竹種について調査されましたが、やはり最大の記録は上田弘一郎博士による:

  マダケ     121cm/1日
  モウソウチク  119cm/1日

の記録が最大で、ギネス記録とのことです。

 ここでは、タケノコの生長について、発筍時期、伸長期間および一日の最大伸長量の記録をしめしましたが、これらの特徴は竹類固有なもので、他の植物には見られない特徴ばかりです。
 このような竹類の特徴を知ると、竹ってポピュラーな植物なんだけど、その生理・生態は不思議な感じがするでしょう。
地下茎のひろがり
 竹類は地下茎によって繁殖する植物ですから、地下茎はもっとも重要な器官です。とくに、マダケやモウソウチクなどの単軸散生型の竹類は横走性の地下茎にある芽が成長してタケノコとなり、成竹するので、地下茎が生活に及ぼす影響はことさら大きいのです。モウソウチクの地下茎は6月頃から成長を始め、8月中旬ぐらいまでは徐々に成長、そして8月下旬急に成長量を増して11月中旬に終わります。ところが、マダケの成長開始は7月中旬で、以後かなり旺盛に成長して11月中旬に終わります。つまり、両種とも発筍が終わり、タケノコがほぼ伸長最盛期になった頃から地下茎が伸び出すのです。
 竹林の地中には地下茎がびっしりと拡がっていて、網の目のようになっています。よく見ると、一つながりになった地下茎のグループがいくつも存在している。このひとつながりの地下茎を“一連の地下茎”あるいは“一家族の地下茎”と表現されています。 
   マダケ林における一連の地下茎(図示)は延長約150mもあり、生きた地下茎の年齢は1年生から9年生までで、10年生の地下茎はすでに枯死していることから、地下茎の寿命は10年以下であることがわかります。また、1年間の最大伸長量は約5mで、この一連の地下茎から21本の竹が育っています。
 マダケとモウソウチク林における地下茎の深さ別の広がりをみると、どの竹林においても地表~深さ20㎝までのところに地下茎の約9割りが存在しています。つまり、地下茎の生活領域はおおむね深さ20㎝までであり、それ以上の深さになるケースは1割程度なのです。
 よく、竹を植えたいけど、広がるのが怖いので遮根板を埋め込んで、地下茎がひろがらないようにしたいけど、どれぐらいの深さが良いでしょうかと聞かれます。その場合、やはりたまに深さ1m以上になることがありますから、深いほど安心というこになります。
竹類も開花する!

開花は病気でない(竹文化振興協会提供)

一定周期で開花(竹文化振興協会提供)
 竹に花が咲くという現象は昔から竹の七不思議の一つです。その原因として周期説、病虫害説、環境説、栄養説、さらには太陽黒点説なるものまで飛び交ったという歴史があります。
 しかし、現在では開花は病気や環境説などでなく、これは竹類の生理現象の一つとして、一定の周期をもって開花することがわかりました。
 ところが、竹類が開花すると、一生を終え、枯れてしまうのが一般的ですから、とても恐ろしい現象なのです。

ナリヒラダケの花(2003)
 さて、竹の花とは、一体どんな花なのでしょうか?
 実は、竹類はイネの仲間ですから、花の構造はイネの花とよく似ています。生態園のナリヒラダケの小穂には2,3本の雄しべと一個の雌しべができました。
 一定の開花周期とは、種子が発芽し、一定の期間を経過したのち、その個体が開花するまでの期間を指し、普通 “花から花までの期間”のように表現されます。
 世界には1千種類以上の竹笹類が生育するといわれていますが、花から花までの期間、すなわち一定の開花周期が学術的に明らかになった種類はほんの数種類だけのようです。 

モウソウチク

マダケ

キンメイチク

メグロチク

リュウキュウチク
 2019年春、竹の資料から生態園の入ったところに植栽してあったキンメイチクが開花しまし、2020年にはすべてが枯死したように見えました。ところが、その中に開花せず、見事に緑の葉を出した非開花の立竹がありました。そこで、植栽した時の記録を調べたところ、植栽時に開花周期の異なるキンメイチク苗を一緒に植栽されたことがわかりました。
 世界には珍しい開花現象の竹があります。インド東部に分布するメロカンナ・バクシフェラは開花すると、大きな果実を実らせます。当公園でも見事な果実が稔りました。

開花・非開花混生キンメイチク

メロカンナの開花果実(2008)